昨年度行ったマウス膀胱癌株の同種皮下移植モデルを発展させ、ヒト膀胱癌株のマウス移植モデルで検討した。まずヒト膀胱癌株の移植モデルを作成するため、ヒト膀胱癌細胞株10株をスクリーニングし、p16欠損ヒト膀胱癌株であるRT112が、抗アシアロGM1抗体(0.1mg)を2回接種した後のNOD-SCIDマウスに10^7個細胞/100μLの接種にて移植可能であった。 次いでこのモデルを用いて、ヒト膀胱癌細胞株移植腫瘍に対するヒトp16機能性ペプチド全身投与による腫瘍抑制効果の検討を行った。上記処理を行ったNOD-SCIDマウス(メス)に10x10^7個/0.1mL PBSを臀部皮下に移植した。実験動物群は対照群(PBS)、Wr-T(導入ペプチド)単独群、p16ペプチド単独群、p16ペプチド+Wr-Tの1回治療群、p16ペプチド+Wr-Tの3回治療群で各群10匹とした。P16ペプチドは8μMのFITC標識ヒトp16ペプチドを使用した。また治療時期は、腫瘍径が2-3mmとなった時点で、エーテル麻酔下に尾静注による全身投与にて治療を行った。評価は腫瘍径を経時的に計測し、現在も進行中であるが、4週目に安楽死にて腫瘍を摘出し、肉眼的、組織学的に抗腫瘍効果を検討する予定である。治療後2週間の経過では、各群に死亡したマウスはなく、体重増加も明かな差はみられなかった。腫瘍体積は、対照群が平均76mm^3であるのに対し、3回治療群、1回治療群が平均47mm^3、49mm^3と小さい傾向がみられ、今後、さらに経過を観察し、4週間の時点で効果、副作用に関する組織学的検討を行う予定である。
|