研究概要 |
昨年度から継続してヒト膀胱癌細胞株のマウス皮下移植モデルの検討と、膀胱注入によつ膀胱内同種移植モデルに対する膀注による予防効果の検討を行った。 p16欠損ヒト膀胱癌株RT11210^7個(100μL中)を高アシアロGMI抗体(0.1mg)で2回接種で前処置した4週齢の雌性NOD-SCIDマウス30匹の臀部皮下に接種し、ヒト膀胱癌移植腫瘍を作成した。治療は各群10匹とし、(1)PBS対照群、(2)ヒトp16ペプチド単独群、(3)ヒトp16ペプチド+トランスポーターペプチドWr-T群において腫瘍径が3mmになった時点で局所治療を行った。経時的に径を計測し、ペプチド投与4週間目に安楽死の上、腫瘍を摘出した。治療群の腫瘍の増殖は対照群に比較して有意に抑制され、21日目の時点で対照群611mm^3に対し、(2)群で338mm^3(p=0.0009)、(3)群で237mm^3(p<0.0001)であった。以上、ヒトp16ペプチドはヒト膀胱癌移植腫瘍に対しも増殖抑制効果を示し、トランスポーターペプチド併用は治療効果を増強させることが示唆された。 次にp16ペプチドの膀胱内移植腫瘍おける膀胱注入による移植抑制効果の基礎検討と治療を行った。マウス膀胱内移植腫瘍モデルとして、マウス膀胱癌細胞株MBT-210^6個/100μLを40匹の7週齢雌性C3Hマウスの膀胱に全身麻酔下に24G静脈留置針外套を用いて膀注し検討した。1群10匹とし、A対照群:前処理なし、B群:膀胱に針による損傷を加え膀注、C・D群;A・B各群にマウスp16+Wr-Tペプチド同時注入群とした。3週間後に安楽死の上、膀胱を摘出、観察したところ、A群・C群・D群には移植腫瘍はみられず、B群の3匹に腫瘍形成がみられた。P16+Wr-T投与群には膀胱腫瘍発生は認められなかったが、対照群の移植率が低いため移植抑制効果を言及することは難しい結果であった。 今後、対照群の移植率を向上させる膀胱移植モデルとして、膀胱粘膜の電気メス焼灼による移植前処置(Horiguchi Y,et al. Human Cell 2008 ; 21 : 57)が100%の移植率とされ有用な方法と考えられた。
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