Cyclin D1のC末端領域のalternative splicingによって生じるvariant cyclin D1bの機能や癌発生における役割について解析を行い、以下の成果を得た。 1.膀胱特異的promoterであるuroplakin promoter、および全組織で発現するpCAGGS promoterの下流にFlag-tagをつけたcyclin D1b cDNAをつなげた発現ベクターを構築し、それぞれのトランスジェニックマウスを作製した。これまでにpCAGGS-cyclin D1b-Tgマウスを2系統、膀胱特異的cyclin D1b発現Tgマウスを1系統樹立することができた。今後、これらのマウスの繁殖・系統維持を継続するとともに、このTgマウスの膀胱および他の主要組織に対し病理組織学的検討を加える。また癌の発生について観察および解析を行う。これらのTgマウスの樹立によって、cyclin D1bの癌発生における役割を個体レベルで解析することが可能になった。 2.293T細胞でのFlag-tagを付けたcyclin D1bとcyclin D1aを発現させる実験系を用いてcyclin D1bと特異的に結合する蛋白質を、抗Flag抗体を用いた免疫沈降法により分離し質量分析計を用いて同定を試み、現在までにprotein phosphatase 1B(formerly 2C)(PPM1B)およびRibosomal protein S8をcyclin D1b特異的結合蛋白として同定した。これらの蛋白が細胞浸潤能の制御にどのよう関わるか検討を加えてゆくことによってcyclinD1bによる浸潤制御の分子機構が明らかになってくることが期待できる。
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