研究課題
申請者はすでに、F344ラットにおけるlipopolysaccharide (LPS)を用いた経尿道的逆行性前立腺炎モデルを確立したが、LPSを経尿道的に単回投与することで、ほぼ100%のラットに前立腺炎を誘発することができた。この炎症は8週間以上存在し、慢性前立腺炎の像を呈していた。F344ラットにheterocyclic amineである2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine (PhIP)を20週間経口投与して前立腺発癌を誘発し、10週間たったところでLPSによる前立腺炎を誘起した。1年間生存したラットの前立腺を摘除し、Johns Hopkins大学病理学のAngelo DeMarzo博士に依頼して組織学的検討を行ったところ、当初癌と思われた組織は実際にはヒトにおけるHigh grade PINに相当する病変であることが判明した。これらの病変における細胞増殖能をKi67の免疫組織染色にて評価したところ、LPSにより炎症を誘発したPhIP投与ラットの前立腺において有意に細胞増殖能が亢進していた。このことは、炎症が前立腺の発癌過程をpromotionすることを示唆していると思われる。今後、これらの標本における自然免疫細胞の浸潤の程度を評価する予定である。一方で、申請者らはヒトの前立腺針生検標本を用いて、tumor-associated macrophage (TAM)の評価を行った。その結果、生検標本中のTAM浸潤が多い症例では、手術後の再発率が有意に高いことが明らかとなった。このことは、自然免疫細胞のひとつであるmacrophageのうち、腫瘍に浸潤しているTAMは癌細胞の増殖や進展に対してpositiveに働くことを示唆しているものと思われた。
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BJU International
巻: (In press)
Cancer Science
巻: 101 ページ: 1570-1573