研究概要 |
我々は概ね実施計画に記したスケジュールに沿って,実験を施行し既に幾つかの重要な成果を挙げることが出来たので以下に要約して記載する. (1)まず,表在性膀胱癌の再発に関与する可能性のある分子マーカーの発現を、免疫組織化学染色にて検索した.我々は,特に細胞周期関連蛋白および細胞接着関連蛋白に焦点を絞り,それぞれ7種類および8種類の蛋白の発現レベルを評価した結果,細胞周期関連蛋白ではp27の,細胞周期関連蛋白でほβ4 integrinの発現レベルと表在性膀胱癌の再発が独立して相関することを明らかにし,臨床病理学的な古典的パラメーターとこれら分子マーカーを組み合わせることにより,信頼性の高い再発予測モデルを構築した. (2)上記の結果を解析する過程で,表在性膀胱癌の再発といわゆるepithelial-to-mesenhymal transition(EMT)との密接な関係を初めて明らかにした.現在,培養細胞を用いて膀胱癌におけるEMTモデルを作製し,EMTの意義を分子レベルで明らかにするために種々の解析を施行中である. (3)β4 integrinを介して抗腫瘍効果を発現する化学物質を同定し,現在前立腺癌細胞を用いて,その分子機構を明らかにした。また,上記のβ4 integrinの発現レベルと表在性膀胱癌の再発との所見を考慮し,その物質と表在性膀胱癌に対する抗腫瘍効果および再発予防効果を解析中である.
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