研究概要 |
我々は概ね実施計画に記したスケジュールに沿って,実験を施行し既に幾つかの重要な成果を挙げることが出来たので以下に要約して記載する. (1)まず,前年度までに表在性膀胱癌の再発に関与する可能性のある分子マーカーの発現を、細胞周期関連蛋白および細胞接着関連蛋白に焦点を絞り,免疫組織化学染色にて検索した.これらの結果に基づき、臨床病理学的な古典的パラメーターと分子マーカーの発現を組み合わせることにより,信頼性の高い再発予測モデルを構築した. (2)上記所見を発展させて,表在性膀胱癌の再発といわゆるepithellal-to-mesenhymal transition(EMT)との関係を解析し,表在性膀胱癌の再発そのものに加え,上部尿路癌の術後膀胱内再発にも,代表的なEMTマーカーであるE-cadhefinおよびN-cadherinが重要な役割を果たしていることを初めて明らかにした. (3)表在性膀胱癌の再発における血管新生因子の役割の検討を行い,経口抗癌剤の一種であるUFTが,血管新生阻害作用を介して表在性膀胱癌の再発予防効果を有する可能性を明らかにした。UFTにより古典的な血管新生因子の分泌レベルは影響を受けなかったが,血管新生阻害作用を有するGBLがUFTにより誘導されることが示された, (4)Heat shock protein 70(HSP70)を標的としたsiRNAが,膀胱癌細胞の抗癌剤感受性を亢進させることを明らかにした.また,その機序としてcaspase依存性のアポトーシス誘導が関与していることを示した.
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