研究概要 |
我々は癌の糖鎖研究の過程で、糖鎖を認識するモノクローナル抗体RM2が前立腺癌由来の糖蛋白であるhaptoglobin-beta鎖に選択的に反応すること、RM2が認識するhaptoglobin-beta鎖は前立腺癌の新たな組織ならびに血清マーカーであることを報告した。近年、haptoglobin構成分子(alpha鎖やbeta鎖)は、汎腫瘍マーカーとしての可能性を有しているといわれている。したがって、癌由来のhaptoglobin-beta鎖に選択性のあるRM2を用いれば市販の抗体に比較して、より高い感度・特異度をもって外の癌の検出もできる可能性があると考えられたため、まずモノクローナル抗体RM2が反応する糖蛋白が、特に悪性度の高い尿路上皮癌を,血尿出現より早期の状態で発見する能力を有するか否かを調べることを目的に研究を計画した。まず1)約50例の尿路上皮癌患者を対象として、モノクローナル抗体RM2による尿中糖蛋白の検出をウエスタンブロッティング法で行い、2)RM2による糖蛋白に対する陽性反応と各種臨床病理学的パラメーターとの関連を統計学的に解析したところ,1)および2)の結果は、悪性度(grade)の高い膀胱尿路上皮癌を有する患者ではわずか20μlのスポット尿で75kDa前後の糖蛋白への反応が認められ、その反応の強さは悪性度に比例している可能性が高いことが分かった。この75kDa前後の糖蛋白の解析を行ったところ、数種類の糖蛋白へ絞りこむことができた。それぞれの糖蛋白に対応する抗体を用いて、約50例の膀胱癌患者尿をウエスタンブロッティングした。すると、1つの抗体において悪性度の高い膀胱癌患者ほど尿中80kDa糖蛋白が増加することが確認された。この80kDa糖蛋白に対する抗体を使用し、膀胱癌組織を用いた組織化学免疫染色を施行し、癌組織内での反応を確認した。また数種の膀胱癌細胞株および正常膀胱上皮細胞株を用いて、80kDa糖蛋白の発現が悪性度などに応じ発現の違いがあるかについて比較検討しているところである。
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