腎細胞癌株及び臨床検体ではHypoxia Inducible Factor(HIF)αサブユニット(1αおよび2α)の発現パターンが異なることが知られています。構造的には非常に近似しているサブユニットなのですが、どのような機能の相違を有しているのかは明確になっておりません。そこでこのテーマを検討するために、それぞれのサブユニットに対して特異的に結合する蛋白を検索することを目的として実験を行いました。 前段階としてまずHIF1αおよび2αそれぞれに特異的に反応する抗体を用いた免疫沈降の条件を最適化するための予備実験を行いました。以前に癌学会で報告した際に用いたモノクローナル抗体だけではなく、認識部位の異なるモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体も用いてみた結果、腎細胞癌株(ACHN; VHLが正常に発現されており、さらにHIF1α及びHIF2αの双方を低酸素環境で発現しうる細胞株)の抽出液からそれぞれのHIFαサブユニットを効率的に免疫沈降させる実験条件を特定することができました。 現在はこの免疫沈降条件下で抽出した検体を用いて、共沈降してきた蛋白を検出する実験系の最適化を行っております。また平成18年度の科学研究助成金の報告で述べた様に、このACHN細胞株を元にレトロウイルスを用いてHIF1α及びHIF2αそれぞれを強制発現させた細胞株およびshRNAを用いて発現を抑制した細胞株を既に作製しております。これらの細胞抽出液を用いることで、よりHIFαサブタイプの発現パターンの違いを増強させた環境下で、特異的に結合しうる蛋白の同定を試みております。
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