研究概要 |
後天性嚢胞腎は末期腎不全患者に高率に発症し、renal cell carcinoma(RCC)が高頻度に合併する。末期腎不全患者の後天性嚢胞腎に合併したRCCでは、sporadic RCC(clear cell RCC やpapillary RCC等)の組織型に加え、acquired cystic disease (ACD)-associated RCCやclear cell papillary RCCといった末期腎不全患者に特異的なRCCをみるが、病理組織学的鑑別が困難なことが多く、α-Methylacyl CoA Racemase (AMACAR)、cytokeratin-7、vinculin 鑑別に有用と報告されていた。我々は後天性嚢胞腎に合併したRCCを1名の病理専門医に再診断いただき、Kit,RCC-marker、Glutathione S-Transferaseα(GST-α)、Carbonic Anhydrase IX(CAIX)、vimentin、PAX-2を加え、免疫学的プロフィールについて検討した。ACD-associeted RCCは80%以上でvimentin陽性であったが、CAIXは発現していなかった。Papillary RCCはACD-associeted RCCと類似パターンを示す一方CK7,PAX-2は差異を認め鑑別に有用であった。Clear cell papillary RCCは60%以上がGST-α、CAIX、vimentinで強陽性を示した。CAIX陰性であったClear cell RCC症例は早期転移した。 後天性腎嚢胞に合併したRCCにおける免疫組織学的プロフィールは多彩であるが、複数のマーカーをセットにすることで鑑別診断を正確に行うことが可能であり、組織型で異なる予後を推測することも可能と考えられた。
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