研究概要 |
前年度と同様に、前立腺生検予定となった症例に対し、直腸診後の初尿を採取しRNAを抽出後cDNAを合成した。今年度は、前年度までの結果を踏まえて、前立腺癌尿中マーカーの候補としては(GAPDH,PSA,PCA3、GOLPH2、TMPRSS2-ERG、FGFR2IIIb、FGFR2IIIcを採用した。また新たにMcm5を採用し、これら標的遺伝子のPCR用primer, TaqMan probeと上述のcDNA,を用い、リアルタイム定量的PCRを実施し、各種遺伝子の発現量を定量した。各遺伝子の発現度は、発現の認められなかった場合のCt値を50とし、PSAの発現度により標準化してΔCt値とし、尿中バイオマーカー値とした。症例数は、前立腺癌群は18例、無悪性所見群は24例になった。U検定を用いて、各尿中マーカーの発現度の群間比較を行ったが、FGFR2IIIbのみ有意差(p<0.05)を認めた。昨年度有意差を認めたFGFR2IIIcについては、今年度は有意差を認めなかった。欧米においては尿沈渣中のPCA3の発現検査が有用と言われているが、我々の調査では、今回もPCA3の有用性は認められなかった。また、欧米では多いとされる融合遺伝子TMPRSS2-ERGは、癌症例で22%と少なく、本邦と欧米では前立腺癌の遺伝子的性格が異なっている可能性が考えられた。また非癌症例でも12.5%存在し、癌特異的でもないようであった。FGFR2IIIbおよび血清PSAと前立腺体積から算出したPSAD PSA F/Tについて、ROC曲線を作成し、cut off値を設定して、各種前立腺癌マーカーの感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正確度を算出すると、FGFR2IIIbの感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率・正確度は、71%、78%、71%、78%、および75%となり、PSA F/TをしのぎPSADに匹敵する診断率を得た。
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