研究概要 |
前年度と同様に、前立腺生検予定となった症例に対し、直腸診後の初尿を採取し、RNAを抽出後cDNAを合成した。今年度は、前立腺癌尿中マーカーの候補としては、前年度までのGAPDH、PSA、PCA3、GOLPH2、TMPRSS2-ERG、FGFR2IIIb、FGFR2IIIc、Mcm5に加えPSGR、EZH2、WDR19、CRISP3、FGF8、IL1α、AGRを採用し、これら標的遺伝子のPCR用primer, TaqMan probeと上述のcDNA,を用い、リアルタイム定量的PCRを実施し、各種遺伝子の発現量を定量した。各遺伝子の発現度は、発現の認められなかった場合のCt値を50とし、PSAの発現度により標準化してΔCt値とし、尿中バイオマーカー値とした。症例数は、前立腺癌群は30例、無悪性所見群は25例になった。 ROC曲線を作成し、cut off 値を設定してAUCの比較を行うと、PSGRのAUCが最大で、以下Mcm5、FGFR2IIIb、FGF8、PCA3と続いたが、いずれのAUCも0.6台で、これら以外はAUCが0.6未満であった。臨床データのAUCはPSADが最大で、以下、直腸診、PSA、PSA F/T、前立腺体積、年齢、画像診断(MRI・エコー)と続いたが、いずれのAUCも尿中マーカーのAUCより大きかった。PSAD(AUC=0.839)とPSGR(AUC=0.636)の間には有意差(P<0.03)を認めた。ROC解析で得られたcut off値を用いたPSADおよびPSGRの感度・特異度・陽性的中率・陰性的中率は、それぞれ80%・84%・86%・78%および70%・68%・72%・65%であった。前立腺癌の尿中バイオマーカーについては、PCA3と同等以上のマーカーの存在が示唆されるが、その有用性はPSADを超えるものではなく、さらなる探索が必要と考えられた。
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