研究課題
本研究は、単独治療では治療後に再発する可能性が高い(ハイリスク群)限局性前立腺癌に対し、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Herpes Simplex Virus-thymidine kinase、以下:HSV-tk)遺伝子発現アデノウイルスベクターを前立腺内に注入し、抗ウイルス剤であるガンシクロビル(Ganciclovir、以下:GCV)を全身投与した後、根治的前立腺摘除術(以下鏡視下手術を含む)を施行した場合の安全性、および直接的な抗腫瘍効果と、間接的な免疫学的効果の解析・評価を目的とした第I/II相試験である。臨床的に遠隔転移を認めず、かつ術後5年以内に再発する可能性の高い予後不良限局性前立腺癌に対し、まずHSV-tk遺伝子発現アデノウイルスベクターを前立腺内に直接注入し、次いでGCVを全身投与する。その後同治療を反復加療した後、根治的前立腺摘除術を施行する。当該研究のプライマリーエンドポイントは、アデノウイルスを用いたHSV-tk遺伝子発現ベクターの反復投与、ならびに外科手術を併用するネオアジュバント療法としての安全性の確認であり、セカンダリーエンドポイントは、当該遺伝子治療における有効性を来す可能性のある免疫学的な反応の解析と、同治療効果の病理学的な評価を目的とする。同臨床研究において使用されたレベルのベクター容量と回数において、その有害事象は保存的な対応で改善し、安全性が確認された。しかしながら一過性の発熱を認めており、先行する米国との比較において、日本人ではその反応性が強く認められる可能性も示唆された。また生体内へのベクターの移行に関しては同定されず、その安全性が確認された。また治療効果に関する検討結果として、当該遺伝子治療により全ての症例でPSA値の低下が確認され、梢血におけるCD8陽性Tリンパ球を中心とした変化ならびに病理学的な殺細胞効果も認められ、その明らかな治療効果が確認された。
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BJU INTERNATIONAL
巻: 108 ページ: 831-838