研究概要 |
実験は、雄F344ラットに去勢、発がん剤(PhIP)投与し、テストステロンを投与の途上にある。第1群:無処置群、第2群:去勢群。第3群:去勢+PhIP投与群、第4群:PhIP単独投与群、第5群:去勢+PhIP+テストステロン投与群とした。テストステロン投与10週(40週齢)において、一部のラットを犠牲死し、前立腺の状態を検討した。腫瘍の発生は認めなかった。P63は、全ての群の前立腺の基底細胞の核に染まり、2層性が確認された。Prostate specific antigen(PSA)は、無処置群(-)。去勢群、去勢+PhIP群、PhIP単独投与群では、腹葉、側葉に細胞質が染まる上皮細胞を少数認めた。第5群で、腹葉、側葉に細胞質が染まる上皮細胞を散見して認めた。Androgen receptorは、非去勢群(第1、第4群)では前立腺全葉、核が強陽性に染まったが、去勢群(第2,3群)では、核の染色性が低下し、細胞質が薄く染まった。第5群では、腹葉、側葉の核に強陽性。背葉では、(-)ないし弱陽性であった。アポトーシス・マーカーCaspase3は、第1~4群では(-)。第5群のみ、側葉に細胞質が染まる上皮細胞を散見して認める。腹葉に細胞質や核が染まる上皮細胞を散見して認める。神経内分泌細胞マーカーSynaptophysin、幹細胞マーカーCD44、CD133は、第1~4群では僅か~少数基底細胞ないし上皮の細胞質に染まり、第5群では、側葉を主体に腹葉の一部にも細胞質が染まる上皮細胞を散見して認めた。これらのことから、去勢により幹細胞のみになるという仮説は、否定された。PSA、 Synaptophysin、 CD44、CD133は、前立腺前癌性病変のマーカーになりうると推定された。今後、60週齢まで経過観察し、実験終了し、発がん性評価、総合評価を行う。
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