研究概要 |
前立腺発がんにおける幹細胞の役割を検討する目的で、まず、去勢による前立腺組織の萎縮、腺上皮の脱落、幹細胞の残存後、前立腺発がん物質PhIPを投与、その後テストステロン持続投与し、発がん状況を検討した。5週齢F344ラットを6群に分け、1-3群に5週齢に去勢し、1,2,4,5群に6週齢より2週間、400ppmPhIPを混餌投与し、4週間普通食のインターバルを置いて、2週間400ppmPhIPを混餌投与を更に2回繰り返した。1、4群には、PhIP最終投与終了1週間後に50mg Testosterone propionate(TP)タブレットを皮下移植した。実験開始後73週後、実験終了、全匹犠牲死し、剖検した。肉眼的に去勢+PhIP+TP群(第1群)、PhIP+TP群(第4群)、PhIP単独投与群(第5群)共に小腸、大腸に腫瘍発生を認めた。PhIP+TP群のみ盲腸腫瘍も認めた。小腸腫瘍は、概ね回盲部より10cm以内、大腸腫瘍は、盲腸より5cm以内に認められた。それら3群間に有意差は認めなかった。去勢+PhIP群(第2群)には、大腸腫瘍を認めなかった。前立腺腫瘍は、顕微鏡的にPhIP+TP群(第4群)、PhIP単独投与群(第5群)のみに認め、他の群には認めなかった。第4群では、11匹中1匹、第5群では、11匹中8匹に認められた。このことから、去勢後のPhIP投与で前立腺腫瘍は出現しなかったことから、前立腺中にcancerとなるべき細胞が、消失した可能性が考えられ、去勢により、幹細胞のみが残存することを考えると、ラットにおいて前立腺腫瘍は、幹細胞より出現するとはいいがたいと考えられる。また、TPのPromotion効果は認められず、逆に抑制的に作用したと考えられた。腸管腫瘍においては、去勢によって、PhIP誘発腸管発がんは抑制された。PhIP誘発腸管発がんにおいてTP投与によるPromotion作用は、確認できなかった。
|