研究概要 |
70歳以上の高齢者に対する疫学調査を行い、夜間頻尿と骨折の発生、死亡率との関連を調査した。初回の疫学調査は2003年に行い、対象者に対して各種の健康状態をインタビューにて調査を行った。長期経過観察を行った対象者は784名であった。骨折発生と死亡について夜間頻尿の有無による影響を多変量で補正したコックスのハザードモデルにて解析を行った。夜間頻尿(一晩に2回以上)は784名中359名(45.7%)に認められた。5年間の追跡期間中、骨折による入院は41例で発生し、そのうち転倒による骨折が32例であった。全骨折について、転倒と関連する因子を補正した後の夜間頻尿を有する群のハザード比は2.01(95%信頼区間:1.04-3.87,p=0.04)であり、転倒による骨折のハザード比は2.20(95%信頼区間:1.04-4.68,p=0.04)であった。5年間の追跡期間における死亡は53例でみられた。死亡率は、夜間頻尿を有する群で高い結果であった。性別・年齢を補正後のハザード比は1.91(95%信頼区間:1.07-3.43,p=0.03)であり、さらに喫煙、糖尿病、虚血性心疾患、腎疾患、脳卒中の既往、抗うつ剤、眠剤、利尿剤の使用の有無で補正した結果も変化がみられなかった(ハザード比:1.98,95%信頼区間:1.09-3.59,p=0.03)。5年間の前向きコホートスタディーの結果、70歳以上の高齢者では夜間頻尿を有する群において骨折発生、死亡率ともに高く、夜間頻尿は骨折発生と死亡率上昇の独立した危険因子であった。
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