研究概要 |
本研究における目的は,酸感受性侵害受容分子,特にAcid-Sensing Ion Channel (ASIC)の膀胱における発現の局在を同定し,間質性膀胱炎発症メカニズムにおける役割を解明することである。このことによって,膀胱知覚神経路における侵害刺激受容メカニズムの一端が解明され,間質性膀胱炎に対する新しい治療薬の開発に繋がるものと期待される。 これまでの研究において1)マウス膀胱において,ASIC1は膀胱上皮および平滑筋に,ASIC2は主に膀胱平滑筋に,ASIC3は上皮下層に発現が証明された。膀胱上皮におけるASIC1の発現は,オスで有意に高く,平滑筋層におけるASIC2の発現はメスで有意に高かった(BJU Int 104: 1746-1751, 2009)。2)マウスin vivo実験において,酢酸膀胱内還流による排尿間隔の短縮には有意な雌雄差が存在した。これは膀胱知覚伝達系の酸感受性に性差があることを示す実験結果であり,間質性膀胱炎の発症率における性差と関連している可能性がある。(Am J Physiol 295: R954-R960, 2008)。3)膀胱に発現するもう一つの酸感受性イオンチャネルであるTRPV1の膀胱知覚伝達系の酸感受性に対する関与を検討した。TRPV1の関与は些少なものであり,TRPV1以外の酸感受性イオンチャネルの関与を示唆する結果であった(Am J Physiol 298: F1351-F1359, 2010)。 以上の結果から,膀胱に発現するASICが膀胱における酸感受性をコントロールすることによって,女性に多い間質性膀胱炎の発症に関与している可能性が考えられた。 本年度は,ラットおよびヒト膀胱におけるASICの発現を確認することができた。そこで,間質性膀胱炎患者の膀胱上皮におけるASICの発現を正常人と比較検討したが,有意な差を認めなかった
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