本研究は、放射線治療後に引き起こされた膀胱機能障害に対して、自己骨髄細胞移植治療が有効なのかどうか検討する。研究期間では、放射線照射傷害膀胱モデルの確立と、そのモデルを用いた骨髄由来細胞移植による膀胱機能障害の改善について検討を行う。ウサギを用いて、放射線傷害膀胱モデル確立を目指したが、個体差がなく、再現性があるモデルの作製は困難であった。その原因は、使用予定していた既存の放射線照射装置の規格では、ウサギ個体差を補う調整(放射線照射距離、照射部位の微調整など)ができなかった。そこで、実験動物をウサギかち、ラットに変更し、放射線照射傷害膀胱モデル確立を目指し研究を進めている。一方で、連携研究者の今村によって、ウサギ、及びラットにおいて大腿骨に2本の骨髄針を刺し、一方から生理食塩水を押し流し、他方から流れ出た骨髄細胞を採取するフラッシュアウト法を確立した。どちらの実験動物においても、フラッシュアウト法で採取した細胞は、個体差がなく、再現性が得られる細胞であることを確認し、自己骨髄由来細胞移植実験に必要な骨髄細胞培養手技も確立した。さらに、その細胞を標識するための緑色蛍光発色タンパクをコードした遺伝子導入にも成功した。放射線照射傷害膀胱モデルが確立した際、自己骨髄細胞移植実験に速やかに移行できる準備ができた。膀胱の機能能測定については、既にラット膀胱内圧測定装置が設置されているため、直ちに測定を行うことができる。以上から、今年度は、自己骨髄細胞採取培養手技の確立など確実な成果が得られた。一方で、個体差がなく、再現性のある放射線照射傷害膀胱モデルを作製するための追加実験を進める必要がある。
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