研究課題
基盤研究(C)
尿路上皮細胞特異的膜蛋白で、尿路上皮粘膜Barrier分子として膀胱粘膜の保護に重要な役割を果たしているuroplakinの分子種の一つであるuroplakin III(以下UPIII)のexon 4を欠くsplicing variantであるuroplakin III-delta 4(以下UPIII-d4)の間質性膀胱炎(interstitial cystitis、以下IC)における病因論的意義を明らかにし、診断マーカーとしての有用性を明らかにする目的で本研究は計画された。患者膀胱粘膜を含む組織サンプルにおけるmRNAレベルでの解析では、UPIIIとともにUPIII-d4の高い発現がみられた。UPIII-d4は正常膀胱粘膜には発現していなかった。組織サンプルを採取したIC患者を膀胱内視鏡所見から潰瘍型と非潰瘍型に分けて解析すると、非潰瘍型に有意に発現が高かった。そこで、UPIII-d4特異的配列を使用して複数種類のラット、およびマウス抗体を作成し、その中からUPIII-d4特異性が高く、検出感度の高かったマウスモノクローナル抗体を用いて、タンパクレベルでの解析を行った。その結果、膀胱組織サンプルでは全体の陽性率が26/ 46(57%)、潰瘍型43%、非潰瘍型80%とやはり非潰瘍型ICに有意に高率に発現がみられた。しかし、潰瘍型IC患者から採取した膀胱組織サンプルでは、粘膜の剥脱が目立ったため組織学的評価に供せないサンプルが数多く見られたことから、サンプリングバイアスの可能性があった。次に、IC患者尿中の剥離細胞を採取し、RT-PCR法を用いてUPIII-d4 mRNAの検出を試みた。RT-PCRの感度の問題から陽性率は8/ 33と低かったが、陽性例は潰瘍型5例、非潰瘍型3例とむしろ潰瘍型で多い結果となった。以上の結果から、UPIII-d4の発現は非潰瘍型ICに特化した現象ではないことが明らかになった。UPIII-d4はICの診断マーカーとして有用である可能性が高いが、組織学的診断への応用の際、潰瘍型ICでは偽陰性の可能性が高いことに留意する必要があると考えられた。尿サンプルによる非侵襲的診断の確立のためには、診断感度をさらに上昇させる必要がある。
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排尿障害プラクティス
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