精子形成にはそれをサポートする周囲の体細胞が必須であることから、in vitro精子形成にも生殖細胞とそれらの周囲の体細胞を元来の関係性を保ちながら培養できる器官培養が有利であると、我々は考えて本研究を開始した。平成21年度に始まる本研究においては、主として器官培養法をもちいて、生後間もないマウス精巣組織片を気体-液体界面において培養した。また精子形成の進行をモニターするために減数分裂特異的にGFPを発現するトランスジェニックマウスを用いて精子形成の進行を簡便にモニターできる系を用いた。さまざまな培養条件を検討した結果、温度は34℃、培養液はαMEM+10%FBSがベストであることが判明した。その条件において減数分裂が完了し、半数体精子細胞が産生されることを見出した。しかしながら、その効率は非常に低く、半数体細胞の出現はごく稀であった。平成22年度においては、引き続き培養条件の検討を繰り返したが、その中でFBSの代わりに血清代替物としてKSRを用いる実験を行ったところ、完全な精子形成がin vitroで進行することを発見した。これはまったく予想外の成果であったが、その条件で得られた精子から産仔を取ることにも成功し、また凍結保存した組織でも解凍後に精子形成を誘導できることも見出した。その成果を論文にし、Natureに発表した。
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