研究概要 |
腎組織障害時に腎固有の修復・再生に関わる機構の解明を目的とした。新規ベンゾイソフラノン誘導体NKOO75はガンマラクトン化合物#1376をリードとし、マクロファージ培養株U937をヒトTNF-βで刺激と同時に添加し6日間培養するとheterodimeric aminoacid transporter、heavy chain rBATを誘導するが、#1376より10倍以上の力価を有す。一側腎尿管閉塞解除モデルを用い閉塞解除7日目の血清クレアチニン(s-Cr)値で障害修復能を評価した。#1376群30mg/kg/day(s-Cr:1.45±0.25mg/dl,n=4)、NK0075群3mg/kg/day(s-Cr:1.59±0.24mg/dl,n=3)、ラットリコンビナントTNF-alpha(rrTNF-αと略す)群(S-Cr:1.26±0.14mg/dl,n=4)の3群は対照群(S-Cr:2.16±0.22mg/dl,n=21)より良好な結果を示したが3群間に差はなかった。本モデルの腎修復病理の特徴的な乳頭部近傍にみられる細胞集団の病理学的検討を加えた。#1376群とNK0075群では、rrTNF-α群とくらべ、(1)尿細管・間質の線維化の抑制、(2)尿細管アポトーシス細胞の減少、(3)糖鎖結合レクチンPHA-4E陽性の血管新生増加、(4)ガレクチン-3陽性の間質細胞の増加、(5)rBAT陽性間質細胞増加をしめした。 rrTNF-α群では尿細管新生が優位であるが尿細管のアポトーシスも観察され線維化のつよい症例もあった。ガレクチン-3はrBAT分子のリガンドで抗アポトーシス活性と血管新生誘導能を有する。NK0075群では尿細管再生と血管新生誘導にすぐれ#1376群より良好な結果であった。以上より、抗アポトーシス活性と血管新生の誘導は腎尿細管・間質障害を修復する細胞群の指標となる可能性が示唆された。
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