研究概要 |
多発性嚢胞腎の分子創薬が盛んになるにつれて、治療介入時期と治療効果の判定には、分子病態を示すバイオマーカーの必要性が高まっている。 尿中分泌細胞小体(exosome)は細胞内の小胞由来の膜構造を総称し、尿中exosomeは、ネフロンから分泌され40-80nmの大きさを持つ。exosomeは超遠心法によりはじめて沈殿する分画に含まれ、また尿中exosomeの特徴として水チャネルアクアポリン(AQP2)を豊富に含んでいる。現在健常者の尿中には約300種類の蛋白がexosomeに含まれており、尿細管、糸球体、尿路上皮細胞由来の蛋白が確認されている。これらの蛋白は質量分析により比較的容易に解析できる。さらに尿中exosomeは蛋白質のみならずmRNA,およびmicroRNAも含んでいることから、細胞-細胞間相互作用を反映していることが報告されている。したがってexosomeから遺伝子、たんぱく質を採取できれば、包括的な遺伝子発現解析が腎組織の採取を必要とせずに、尿の採取のみで行える可能性もある。平成21年度は、しょ糖密度勾配での超遠心により尿中のexosomeを抽出し、含まれている蛋白質を質量分析法で解析した。ペレットをSDS-PAGEで展開し、Coomassie blueで染色したのちに、分子量に応じてゲルを切り出し、切り出したゲルをトリプシン処理をして分解し、液体クロマトグラフィー/質量分析法で解析したところ、ペプチドの同定が可能であった。
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