研究概要 |
尿中分泌細胞小体(exosome)とは、細胞内の小胞由来の膜構造を総称し、尿中exosomeは、ネフロンから分泌され40-80nmの大きさを持つ。exosomeは超遠心法によりはじめて沈殿する分画に含まれ、また尿中exosomeの特徴として水チャネルアクアポリン(AQP2)を豊富に含んでいる。現在健常者の尿中には約300種類の蛋白がexosomeに含まれており、尿細管、糸球体、尿路上皮細胞由来の蛋白が確認されている。さらに尿中exosomeは蛋白質のみならずmRNA,およびmicroRNAも含んでいることから、細胞-細胞間相互作用を反映していることが報告されている。したがってexosomeから遺伝子、たんぱく質を採取できれば、包括的な遺伝子発現解析が腎組織の採取を必要とせずに、尿の採取のみで行える可能性もある。平成22年度は、健常者ならびにADPKD患者において、しょ糖密度勾配での超遠心により尿中のexosomeを抽出し、含まれている蛋白質を質量分析法で解析した。液体クロマトグラフィー/質量分析法で解析したところ、ADPKDに特異的なペプチド群が見いだされ、現在その臨床的な意義を検討している。また嚢胞腎を形成する遺伝子異常を持つpcyマウスにおいても、尿からexosomeを分離し、含まれている蛋白質についてペプチド探索を行ったところ、NGAL、MCP1など尿細管由来のバイオマーカーを尿中に同定した。これらの蛋白が治療により変動するかを検討する予定である。
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