研究課題
本年度の研究の端緒は平成21年度に報告したウサギ未成熟精子細胞の受精機能の検討である。すなわち、ウサギの未成熟精子細胞の顕微授精システムを用いた動物実験モデルを使用した。すなわち、ウサギの円形精子細胞から精子までの各成熟段階の精細胞をウサギ卵子内に顕微注入して、その発育と免疫蛍光染色による精子星状体の発現、すなわち、精子中心体機能を評価した。この動物実験からよりは、円形精子細胞には受精の成立に必要な精子中心体機能が備わっていないことが明らかになった。本年度はヒト円形精子細胞における中心体機能の発現を顕微授精システムを用いて評価した。ヒト精巣組織のサンプリングはなかなか機会が恵まれずその遂行に時間を要した。精巣組織を細切して、顕微鏡下に形体的に円形精子細胞を同定し、マイクロマイクロマニュピレーターで細胞それぞれを回収した。それらの円形精子細胞を卵子内に注入したところ、卵子の活性化とそれに引き続く発生は認められなかった。しかるに、カルシウムイオノファーを用いて補助活性化を施行した。補助活性化により核相は減数分裂を再開がみとめられたので、それを継続して培養し免疫蛍光染色にて微小管の形成を観察した。検討した30個の円形精子細胞注入後補助活性化施行卵子のなかで精子中心体機能の発現である精子星状体がみとめられたのは3個(10%)であった。この結果はヒト円形精子細胞にも微小管形成中心としての機能的な精子中心体が存在することを示す。しかし、その機能発現効率は通常の補助活性化などでは低く、新しい中心体機能賦活化の方法の開発が必要であることが明らかになった。
すべて 2011
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J Obstet Gynaecol Res
巻: 37 ページ: 581-5