研究概要 |
妊産婦脳血管障害の病態を解析するため、本年度はラット急性高血圧モデルの作成および動物実験用MRIによる脳浮腫評価法の確立を目指した。急性高血圧の作成にはイソフルレン1.5%による麻酔下にラットに気管内挿管し、人工呼吸下でフェニレフリンを持続静脈注入することにより、動物の全身状態を変化させること無く安定した急性高血圧を作成することが可能であることが分かった。また脳浮腫評価のためのMRI撮像パラメターは、4.7T MRIにおいて、TR2000ms,TE80msのT2強調画像が最適であり、浮腫出現時には、後頭葉を主体とした信号強度の増加が認められた。また部位による脳浮腫の程度を定量評価するために、グラディエントカラム法による脳比重測定法を確立した。実際に脳浮腫作成後の脳から1mm四方の組織片を細切し比重測定を行ったところ、T2強調画像における信号強度と脳浮腫の重症度とが正の相関を示すことが判明した。 血管脳関門の破綻とそれに伴う細胞の脱分極(痙攣発作)を麻酔下で評価するために、塩化マンガンの静注を試みたが、文献に記載されている100mMの持続静注ではラット心毒性のために脳浮腫が出現する前に心停止もしくは肺水腫が出現することが多く、現在至適静注方法を検討中である。 次年度は、本年度確立した方法をもとに、妊娠ラットと非妊娠ラットの脳浮腫、細胞脱分極発生の閾値に差があるか否かを明らかにする予定である。
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