研究概要 |
【目的】妊産婦脳血管障害の病態解析とその検査法の確立 【方法】非妊娠メスラット(NP群;n=11)と妊娠後期ラット(LP群;n=9)を、1.5%イソフルレン吸入麻酔下に気管内挿管。麻酔をペンドバルビタールの静脈投与に切り変えてエバンスブルーを投与後にフェニレフリンを持続静脈投与することで全身状態を変化させることなく脳の自己制御能の域値を言われる収縮期血圧170mmHgを超える急性高血圧状態を安定的に作成。4.7T動物実験用MRIを用いて、昇圧前から170mmHg以上に昇圧されて安定するまでT2強調画像を連続撮影し脳浮腫形成評価を行った(TR2000ms,TE80ms)。 また。血管脳関門の破綻とそれに伴う細胞の脱分極(痙攣発作)を麻酔下で評価するために塩化マンガンの静脈投与も行いT1強調画像を撮影した(TR600ms,TE25ms)。 【結果】NP群、LP群ともにフェニレフリン持続投与するとある時点で急激に収縮期血圧が170mmHg以上に上昇し、同時に後頭葉有意にT2強調画像で高信号部位が出現した。最高血圧は両群で差は無いが、昇圧までに必要なフェニレフリン投与量はNP群で有意に多く(0.39±0.35vs.0.88±0.35;p<0.05)、高信号の発症部位はNP群のほうが後頭葉以外の部位にも発症しやすい傾向があった。摘出した脳組織へのエバンスブルーの染み出し部位はT2強調画像で高信号になった部位と一致しており、血管脳関門の破綻をT2強調画像で評価できることが確認された。塩化マンガン投与後のT1強調画像ではT2強調画像で高信号になった部位と一致して信号の増強が認められた。 【結論】妊娠群では非妊娠群よりも急性高血圧モデル作成により多くの薬剤投与が必要であった。T2強調画像で脳浮腫が形成される血圧には明らかな差がなく、妊娠に伴う脳血管自己制御能の域値の低下は確認されなかった。また、非妊娠群ではより広い範囲で高血圧性脳浮腫が起きており、妊娠特有の自律神経機能や血管内皮機能がこの違いに関与していることが推測された。非侵襲的検査法であるMRIを用いて生体下で脳浮腫形成を評価することが可能であった。
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