昨年度までに、前置癒着胎盤に対する「子宮底部横切開法」を我が国の"スタンダード術式"とすることに成功した。今年度は、最終の課題である、(1)「本術式を行った後の妊娠の安全性をどのように確保するか」と、(2)「この術式を取り入れた、前置癒着胎盤症例の診療指針の策定」、の2点の確立に取り組み、以下の成果を挙げることができた。 (1)本術式を行った後の妊娠の安全性をどのように確保するか この点に関しては、子官底部の切開創をできるだけ小さくすることである。検討の結果、切開長を8~10cmとし、切開縁へ胎児骨盤もしくは児頭を誘導する方法を開発することができた。 (2)子宮底部横切開法を取り入れた、前置癒着胎盤症例の診療指針の策定 研究を続ける中で、前置胎盤や前置癒着胎盤でコントロール不能となる強出血の流路は、上臂動脈や内腸骨動脈から骨盤底を巡り傍腟結合織に沿って子宮頚部に侵入する血管群であることが判明した。そこで、「子官底部横切開」に「子宮下端を細チューブで絞扼する駆血法」もしくは子宮下部を一括するU字縫合を組み合わせた診療指針フローチャートを作成させた。 以上の実績を、本年度中に10回の国内学会で招請特別講演で紹介してきた。また、2件の手術書と1件の和文論文に掲載予定である。さらには、1件の英文論文として投稿中である。なお、次年度にも既に6件の特別講演が予定されている。 なお、多くの総説や手術書のなかで、子宮底部横切開法は「小辻式」と称されるに至った。
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