子宮内膜症由来の間質細胞と正所性子宮内膜の間質細胞において単層培養と3次元の立体培養したもので比較検討した。3次元培養では、3日間培養すると球型に近い形態をとることが確認されている。培養72時間後の上清中のinterleukin-6(IL-6)およびinterleukin-8(IL-8)のタンパク産生はどちらも内膜症では増加し、内膜では減少することが明らかとなった。Tumor necrosis factor (TNF)-aを添加して、サイトカインの誘導を行うと、単層培養では内膜症および内膜どちらも増加したのに対して、3次元培養群では、内膜症では反応せず内膜はサイトカイン産生の促進効果が見られた。このことはこれまで子宮内膜症の培養細胞実験系で確認されたこととは全く異なる反応であった。 次により生体の状況に近づけるため、球形になった間質細胞を上皮で覆うことを試みた。子宮内膜癌由来のISHIKAWA、HEC-1およびSNG-II株を使用した。実験系の確率に比較的難渋したが、約10日間で細胞数を調整することで安定することが確認され、HE染色でも確認した。しかしながら、これらの細胞はTNFaにあまり反応せず、内膜症細胞と内膜細胞ではサイトカイン産生に差は認めなかった。従って、外的にTNFaを添加しても間質細胞内には伝わらないことが示唆された。 これらの研究成績から、TNFaはマクロファージなど他の細胞で産生され子宮内膜症に作用すると考えられてきたが、内膜症細胞は正所性内膜と異なり、自らIL-6やIL-8を産生しオートリンやパラクリンで作用し内悪性の進展や病因に作用し手いると考えられ、この機序を明らかにすることで新たな治療法の開発につながる可能性がある。
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