マウス卵を用いて、卵成熟に対する活性酸素種やメラトニンの作用を検討した。 (1) 3週齢雌ICRマウスにpregnant mare serum gonadotropin(PMSG)10IUを投与し、48時間後に卵巣を摘出し、denuded oocyteを分離採取した。酸化ストレスとして、H202を培養液中に添加して卵培養を行った。卵の成熟過程では第一減数分裂が再開し、第一極体の放出がみられるため、12時間培養後の卵の第一極体放出の割合を観察した。H202を添加しなかったコントロールでは、第一極体を放出した卵は92.9%であったのに対し、H202添加では200μM以上の濃度で第一極体の放出が抑制された。 (2) H202で引き起こされる卵の成熟障害をメラトニンが防止できるかどうかを検討するため、H202と同時にメラトニンを添加し卵培養を行い、12時間後における第一極体放出の割合を観察した。H202で抑制された第一極体の放出は、メラトニンにより有意に改善した。すなわち、酸化ストレスにより卵の成熟が障害され、これをメラトニンは防御することが明らかとなった。 (3) メラトニンが卵細胞内においても抗酸化作用を発揮しているかどうかを検討するため、活性酸素と反応し蛍光発色する色素dichlorofluorescein(DCF-DA)を添加して卵培養を行い、蛍光顕微鏡にて卵細胞内の発色を観察した。H202添加して培養した卵にDCF-DA処理を行うと、活性酸素と反応し緑色に蛍光発色するが、H202非添加群の卵では発色を認めない。H202添加での発色強度は、メラトニンを同時添加すると有意に抑制された。したがって、メラトニンは卵細胞内においても抗酸化作用を発揮していると考えられた。
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