研究概要 |
我々は排卵過程において卵胞内で発生する活性酸素をメラトニンが消去し、卵や顆粒膜細胞の酸化ストレスを低下させ、卵の質の低下防止や顆粒膜細胞の黄体化に貢献していることを研究している。今回は、活性酸素が顆粒膜細胞のDNAにどのような損傷を与えるか、またメラトニンがその損傷を防ぐことができるかどうかを検討した。 1.3週齢雌ICRマウスにpregnant mare serum gonadotropin 10 IUを投与し、48時間後に卵巣を摘出、卵胞をpunctureし顆粒膜細胞を分離採取した。30分間の前培養の後、 (1)control、(2)H202 100μM、(3)H202 100μM+メラトニン100μg/ml、(4)メラトニン100μg/mlの4群で2時間の顆粒膜細胞培養を施行し、培養後に4%パラホルムアルデヒドで固定した。抗8-hydroxy-2-deoxyguanosine(8-OHdG)抗体(グアニン塩基の酸化損傷マーカー)、抗γH2AX抗体(DSBのマーカー)を用いて蛍光免疫組織染色を施行し共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。また、核の断片化によりアポトーシス細胞の頻度を検討した。H202添加では、顆粒膜細胞核内の8-OHdGおよびγH2AXの蛍光強度は有意に増加し、アポトーシス細胞が増加したが、メラトニンを同時添加するとこれらはcpntrolレベルまで有意に低下した。なお,メラトニン単独添加では変化を認めなかった。 活性酸素は顆粒膜細胞DNAのグアニン塩基の酸化損傷、DSBを引き起こす。メラトニンはこれらの損傷を減少させることでアポトーシスを抑制していることが明らかとなった。
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