研究概要 |
幼弱期に受けたストレスが、身体のストレス反応に長期な影響を及ぼすことが知られる。今年度は幼弱期の感染ストレスが、ストレスによる性機能抑制反応に与える長期的影響(プログラミング)を検討した。 1. 「雌ラットにおける新生仔期の感染ストレスによる、性機能と摂食機能に対するプログラミング」 新生仔期(日齢10)に感染ストレス(LPS)を与え、成熟後に感染ストレス(LPS)を負荷して、摂食と性機能を検討した。新生仔期にストレスを受けた雌ラットでは、成熟後のストレスに対する性機能抑制反応が増強し、摂食抑制作用は軽減するプログラミングが見られた。また、幼弱期ストレス群は、成熟後の視床下部のUCN2およびCRHR2の発現が高く、このプログラミングに関与していることが示唆された。 2. 「雄ラットにおける新生仔期の感染ストレスによる、性機能に対するプログラミング」 新生仔期に感染ストレス(LPS)を与えた雄ラットでは、成熟後の感染ストレス(LPS)に対する血中LH値の低下を認めなかった。中枢の感受性(IL-1β,TNF-αmRNA産生)が減弱し、性腺(精巣)の感受性は変化しない。雄では性機能抑制が減弱するプログラミングが視床下部で起き、感染ストレスに対する視床下部サイトカイン産生亢進の減弱がこのプログラミングに関与していることが示唆された。 3. 「雄ラットにおける新生仔期の感染ストレスによる、摂食機能に対するプログラミング」 幼弱期に感染ストレス(LPS)を受けた雄ラットでは、成熟期の同ストレスに対し摂食抑制が減弱した。その際、レプチン上昇がみられず、視床下部IL-1β,TNF-αmRNA、,NPYmRNAの発現上昇は幼弱期生食投与群よりも軽度であり、プログラミングに関与していることが示唆された。
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