これまでの観察で、正常胎児では在胎33週で明らかな脳機能のリズムが出現するのに比べ、胎児発育遅延(IUGR)症例ではリズム形成の時期は遅れることが観察された。 Richardsonらによる羊胎仔の慢性実験モデルで、脳機能リズムを示すactiveとinactive stateでは、前者は後者に比して脳血流量の増加と脳での酸素消費量の増加とが報告されている。このことが胎児の脳発達に寄与しているのではないかと推測されている。 今年度はヒト胎児の脳機能リズムの観察に加えて、active stateとinactive stateでの胎児中大脳動脈の血流速度も併せて観察した。胎児心拍数モニタリングを行いながら、妊娠32週以降の妊婦10例について分析を行った。 Active stateでは中大脳動脈血流速度は一定ではなく、inactive stateに比べて有意にばらついた。(p=0.019)今後は症例を増やし、各種最大血流速度や血流速度のばらつきのもつ意義を追求していく予定である。 らに、胎児脳機能リズムを観察し、本研究に登録した児の発達心理学的検査を2名の心理士で3歳になった時点をめどに行っている。当大学内に整備した一室を使い、母親からの聞取り調査に基づいてKIDS(発達検査)、K-ABC(認知能力検査)および田中ビネーV(知能検査)を9例について完了し、同時にCSB-RS(母親評定による子どもの行動傾向の測定)も併せて行なっている。 現時点での結果としてはIUGR児の認知能力に偏りは認められなかったが、正常発育を遂げて世紀酸となった4例の中に、むしろ認知処理の偏りが観察されるという結果であった。また、3歳児の増加を待って行動傾向の評価を行う予定である。
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