研究課題
子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)は一般に良性腫瘍であるが、その0.7~1.6%が悪性転化して卵巣癌を発生する。しかし、悪性転化に伴う分子化学的変化についてはあまり研究が進んでいない。そこで今回申請の研究では、子宮内膜症合併卵巣癌および悪性転化により生じた卵巣癌組織を用いて、同一切片内の内膜症、移行部および悪性の各組織をマイクロダイセクションにより切り出し、各組織より抽出したDNAより癌関連遺伝子の変異およびloss of heterozygosity(LOH)を解析し、癌関連遺伝子近傍の遺伝子変異を明らかにする。さらに、免疫組織染色により各組織間でのタンパク発現様式の差異について明らかにする。平成21年度は、SampsonとScottの病理組織学的悪性転化基準を満たし明確な臨床病歴を示す卵巣癌12例を用いた。6本の染色体上の13種のマイクロサテライトマーカーを用いて計31か所のLOHを検出した。免疫組織染色では、アロマターゼが内膜症と癌組織間で染色強度の差を認めた。しかし、ステロイド・レセプターのERα、ERβ、PgR、アポトーシス関連のFAS、FAS-Ligand、Bax、Bcl-2、そして癌関連のPTEN、P53、hMLH1、p16^<INK4a>は、全例で内膜症、移行部、癌の間で染色性に差がなかった。平成22年度は、これまでの成果を一流英文誌に発表した(Xu B,Kitawaki J,et al.Gynecol Oncol,2011)。平成23年度は、検出したLOHの情報を基づき癌関連遺伝子近傍の悪性化に関与すると予想される遺伝子Xの変異に着目して検討中である。この研究成果により、卵巣癌の発生機序に迫るとともに、子宮内膜症性嚢胞の中で悪性化を起こしやすいものとそうでないものとの識別に応用が可能となり、臨床的にも特に有用であると期待できる。
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