研究課題
ヒト着床における胚の陥入による子宮内膜上皮細胞層の破壊と再構築において、分子学的機序はまったく解明されていない。破壊と再構築の基盤として、想定される細胞死と細胞増殖による子宮内膜上皮細胞の数的変化による機序のほかに、遠心性・求心性の運動による子宮内膜上皮細胞の動的変化による機序を作業仮説として検討した。ヒト子宮内膜上皮細胞株Ishikawaと絨毛癌細胞株JARのspheroidを用いた内膜-胚モデルによるin vitro着床アッセイを以て解析した。前年度までに子宮内膜上皮細胞の運動能を亢進させうる上皮間充織転換(EMT)を惹起しうると明らかにした条件下(卵巣ステロイドホルモン添加、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤[HDACI]添加)において、(1)着床率(接着率)を上昇させると同時に、(2)胚伸展面積速度(単位時間あたりの胚の伸展)は有意に上昇する。(3)胚陥入による上皮組織欠損部の子宮内膜上皮細胞の被覆速度には有意差を認めない。(4)集団としての細胞運動能は亢進する(創傷治癒アッセイ)ことを示した。(5)さらに、EMTで特徴的に局在変化するN-cadherinの機能阻害抗体FA-5の添加によって(1)の現象には有意な変化をもたらさないが、(2)(4)の現象を有意に抑制することを明らかにした。以上から、ヒト着床において、卵巣ステロイドホルモンの制御下に、子宮内膜上皮細胞ではEMTが惹起され、N-cadherinの発現・局在変化が亢進することで、細胞運動能が上昇し、胚の陥入に有利に陥入ルートを形成すべく遠心的に運動する可能性を明らかににした。さらに、time lapse video recordingの手法を導入することで、実際に子宮内膜上皮細胞 Ishikawaが胚モデルJAR spheroidとのinteractionによって遠位方向へ集団的細胞運動を起こすことを示すデータを得ている。
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