研究課題
本研究では、リポキシゲナーゼ(LOX)経路および関連する脂質メディエータの働きに着目しながら、分子生物学的な解析手法により、子宮内膜症の発症・進展・慢性化機序の一端を明らかにすることを目的とする。本年度は、手術検体より採取した内膜症病変ならびに正常内膜組織における5-LOX、12-LOX、および15-LOXの発現パターンを、リアルタイムPCRと免疫組織化学を用いて、昨年度に引き続いて更に詳細に解析し、昨年度と同様の結果が得られることを確認した。続いて、ヒト子宮内膜を異所性に担う内膜症モデルマウスにおいても、LOXが同様の発現パターンを呈するかを調べるために、内膜症モデルマウスの構築を行った。これまでホストになる免疫不全マウスとしてNOD-SCIDマウスが用いられてきたが、このマウスnatural killer(NK)活性を有していることより、異所性内膜組織の特性やポテンシャルをマスクする可能性がある。そこで、NK細胞およびNK活性もほぼ欠如した重度免疫不全マウスであるNOGマウスを用いて、その腹腔内にヒト内膜組織片を移植して、内膜症モデルマウスとした。LOX類の解析を行う前に、このヒト化NOGマウスが内膜症モデルとして妥当か否かについて免疫組織化学およびHE染色にて検証した。その結果、移植後3週間の時点で、腺管・間質構造を有する内膜様組織が維持されていた。従来、マウス由来の血管ネットワークが移植組織内に構築されると考えられていたが、本モデルでは、ヒト内膜移植片から宿主に向かって血管新生が起こり、ヒト-マウス間のキメラ血管が移植片の生着と維持に寄与していることが明らかになった。以上、本年度は、次年度の研究に向けての基盤となる材料や知見が得られた。
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