本年度(平成21年度)は、モデル作成および照射実験諸条件の設定を行った。「モデル作成」胎児疾患モデルとして胎児巨大膀胱症および双胎間輸血症候群モデルの作成を行った。妊娠25日齢のJWラビットを麻酔下で開腹し、子宮および卵膜を切開した後、胎仔外尿道口を4-0ナイロンで結紮し、子宮内に戻し卵膜、子宮を縫合後、閉腹した。妊娠28日に超音波を用いて当該胎児を確認したところ巨大膀胱症となっていることが確認された。その後帝王切開術を施行し胎児を娩出し、HIFU照射実験に供した。この方法は再現性も高く今後の実験モデルとして適していることが確認された。次に双胎間輸血症候群モデルの作成をおこなった。水腎症モデルと同様の条件で二匹の胎仔の臍帯静脈の吻合を試みた。一例母獣の閉腹まで行ったが、侵襲が大きかったため死産に至った。ラビットでは双胎間輸血症候群のモデル作成は不可能と判断した。本年度はモデルの代わりに胎盤の表面血管の閉塞実験を行った。 「照射実験」胎児巨大膀胱モデル:イメージング用プローブ(8MHz)を結合させたHIFUトランスデューサー(2.8Hz)を用い、胎児胸腹部を描写し、照射強度は8kw/cm2で、照射時間を1クール60秒として胎児胸部及び下腹部にHIFU照射を行った。胸部は60秒照射2クールで、下腹部は1クールでそれぞれ径1mmの瘻孔が作製できた。下腹部においては瘻孔作製直後より尿の排出が認められた。ともに出血は認められなかった。胎盤表面血管:娩出直後の胎盤表在血管(血管径1mmから2mm)とした。胎盤を脱気水中に固定した。200Wの照射強度で20秒を1クールとして胎盤表在血管にHIFU照射を行った。照射後の血管は超音波では高輝度に描出され、肉眼的には白色変性が認められた。HE染色では照射領域の血管部位に空胞変性を伴う凝固壊死変性が認められた。照射周囲には明らかな変化は認められなかった。上記の諸条件で血管閉塞が可能であることが確認された。
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