研究概要 |
同種免疫異常の治療として従来,夫リンパ球による免疫療法が広く行われてきたが,感染症や自己抗体の誘導などの副作用や,さらに治療効果の確実性の点より,近年は行われない傾向にある.それに代わる治療としてイムノグロブリン大量投与療法が行われている.しかし,非常に高額とな点や限られた医療資源を大量に使用するという医療倫理的問題がある。我々は不育症にアレルギー疾患同様に衛生仮説が成立する可能性を検討するため、免疫機序による不育症モデルとして確立したDBA/2JオスX CBA/Jメスマウスの系でイヌフィラリアより精製されたrDiAgを用いた検討を行った。DBA/Jメスマウスの背部皮下に無菌的にオスモティックポンプ植え込み,1-30μgのrDiAgを投与しDBA/2Jオスと交配した。妊娠13日目に屠殺し,生存胎仔数と吸収胎仔数を判定、胎盤・脱落膜の組織学的検討と,サイトカインの定量を行った。その結果、非投与群の胎児吸収は、42.9%であったが、rDiAg投与により11.1%まで減少した。血中サイトカインの解析ではIL-4,IL-23,TNF-αが有意に減少し、IL-17は減少傾向を見たが有意差はなかった。寄生虫由来抗原rDiAgは習慣流産モデルマウスで統計的に有意に妊娠予後を改善した、その機序は従来知られていたTh2の誘導ではなく、Th1,Th2ともに抑制する新たな機構があると考えられた。
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