研究概要 |
本研究の目的はヒト臨床検体を用いて各種因子の蛋白および遺伝子レベルでの発現を解析し、さらに培養実験などを用いて確認検討をすると同時に臨床に即した母体ストレスの定量化により母体ストレスと産科異常との関連を分析し、妊娠中の望ましいライフスタイルを見出すことである。本年度は分娩時の胎盤、卵膜組織および母体血、臍帯血を総計120症例ほど採取し、保存し、それらをもとに酸化ストレスのもたらす妊娠への影響について基礎的・臨床的に検討し、酸化ストレスによって絨毛組織および血管内皮からのs-endoglin産生を更新させ、妊娠高血圧症候群などの病態に関与することを明らかとした(Mol Hum Reprod,2010)。また、不妊治療における患者ストレスを唾液中ストレスマーカーの測定および質問票から評価し、着床時期におけるストレスが有意に着床率に影響を及ぼすことを明らかとした(現在投稿準備中)。免疫抑制因子であるRCAS1(human tumor-associated receptor-binding cancer antigen expressed on SiSo cells)が、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの妊娠中の様々な病態に関連していることを示してきたが、実験動物モデルマウスにおいてRCAS1分子の子宮における免疫抑制に寄与して胎盤形成などに影響を及ぼすことを明らかとし、RCAS1分子が将来的に治療ターゲットとなりうることを明らかとした(Am J Reprod Immunol,2010)。さらに、実験モデルマウスにおける検討ではあるが、C-reactive proteinが、児の脳障害増悪因子の一つとなりうることを明らかとした(Reprod Sci,2010)。平成21年度における検討で酸化ストレス、内分泌的ストレス、炎症性ストレスいずれもが妊娠中の病態および母児の予後に影響を与えることを明らかとした。
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