研究概要 |
1)子宮内膜異型増殖症14例、子宮体癌14例にMPA+メトホルミン併用療法を行った。奏功例のうち再発率はそれぞれ0%、23%と既報告にくらべ低い傾向が確認された。メトホルミン服用による再発予防効果が示唆された 2)子宮体癌培養細胞株Ishikawa株をAMPKα siRNAで抑制し、AMPK-mTOR経路関連タンパクの発現、増殖抑制効果を検討した。AMPK抑制にて、メトホルミンの増殖抑制効果が減弱したが、完全に抑制されなかった。AMPK抑制により、メトホルミンによるS6K1の脱リン酸化は解除されたが、cyclinD,Rb、ERKは抑制された。メトホルミンの作用機序はAMPKを介する系と、AMPKを介さない細胞周期蛋白の制御が示唆された。 3)同意の得られた子宮体癌患者の手術待機中にメトホルミンを投与し、投与前後の組織を採取し、AMPK-mTOR経路関連タンパク、細胞周期蛋白の変化をウエスタンブロット法で検討、免疫染色にてリン酸化S6、リン酸化ERK1/2、ki67の発現の変化を検討した。子宮体癌患者でも、培養細胞株と同様のシグナルの変化が確認された。免疫染色の結果、投与前後でリン酸化ERK1/2・リン酸化S6の発現が減弱した。また、ki671abeling indexが有意に低下していた。メトホルミンは子宮体癌患者への短期間の投与で、増殖抑制効果が確認された 4)臨床投与量のメトホルミン投与時の、血中濃度・子宮内膜局所濃度を測定したところ、投与2時間で血中濃度は平均1679ng/ml、組織内濃度は平均427ng/g per wet weightであった。この濃度ではin vitroでの増殖抑制は見られないことから、メトホルミンの増殖抑制効果は、間接的な効果の可能性が示唆された。
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