がん微小環境は、腫瘍細胞と間質との相互作用などとともに、固形がんの基本的性質1つである。林らは、プロテアソームの構成因子LMP2の発現低下は、ヒト子宮平滑筋肉腫の発症に直接関与していることを明らかとした。現在、正常組織とは異なるがん微小環境での子宮平滑筋肉腫の生物学的応答についてLMP2の発現を主眼において解析を行い、子宮平滑筋肉腫の治療標的因子の絞り込みを行っている。子宮平滑筋肉腫培養細胞内においてLMP2の恒常的発現により、どのような機序が誘導されるか、林らは、サイトカイン・ケモカインを中心とした遺伝子発現のプロファイリングをマイクロアレイにより検討している。現在まで、血行性転移:細胞浸潤と新生血管の誘導因子であるVEGF-AとIL-8の遺伝子発現が、LMP2発現低下によって著しく誘導されることが明らかとされた。つまり、子宮平滑筋肉腫細胞での顕著なVEGF-AとIL-8の発現が、LMP2の恒常的発現により低下する。そこで、IL-8の生物学的作用である子宮平滑筋肉腫細胞の細胞遊走能・浸潤能とLMP2の発現状況との関連性について検討を行った。子宮平滑筋肉腫細胞の細胞遊走能・浸潤能が、LMP2の恒常的発現により有意に低下し、その機序は、LMP2の恒常的発現により低下されたIL-8に依存していることが明らかとされた。つまり、子宮平滑筋肉腫の血行性転移には、LMP2の発現が関与している可能性が示された。現在、さらに子宮平滑筋肉腫の血行性転移とLMP2の発現に関する詳細な検討を行っている。
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