研究課題
本年度は、ヒト大網中皮細胞の不死化細胞株を作製し、それウイルスのcarrier cellとして用いた場合のin vitro、in vivoにおける生物学的特性、治療効果を検討した。がんではない不死化ウイルス感染大網中皮細胞を腹腔内投与すれば、使用するfreeウイルスの減量や腹腔内腫瘍細胞へ効率のよいcell-to-cell感染が成立し、初期のウイルス感染排除に関連するマクロファージからの攻撃や、中和抗体、補体の干渉からの回避が期待できよう。さらに、患者自身の大網中皮細胞を使用すれば免疫拒絶反応の問題も無いと考えられる。まず、卵巣癌患者からの同意および名古屋大学医学部倫理委員会での承認事項に基づき、摘出大網の一部を実験用に採取し、大網中皮培養に使用した。この初代培養細胞に、共同研究者である国立癌センターウイルス部 清野透博士により、レンチウイルスシステムを用い、同初代培養細胞にhTERT, Cdk4, Cyclin D1の各遺伝子を導入し、不死化細胞を樹立した(HOmMC)。変異型HSVであるHh101のHOmMCでの増殖は初代培養大網中皮或いは卵巣癌株SKOV3での増殖に比べて感染後24時間の評価では、約10倍たかく、0.03MOIでは感染後72時間で感染細胞のlysisは起こってくるものの、carrier cellとして最適であると判断された。またHSV中和抗体の共培養においても、ウイルス単独の場合と異なり、ウイルス量として等価である感染carrier cellの場合、明らかな拡散を認めた。ヒト卵巣癌腹膜播種ヌードマウスモデルでの治療成績では、ウイルス単独治療群の平均生存期間が46日であったのに対して、等価である感染carrier cell治療群では55日と明らかに延長を認めた(p<0.05)。
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