研究課題/領域番号 |
21592130
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (80283597)
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研究分担者 |
小西 郁生 京都大学, 医学研究科, 教授 (90192062)
松村 謙臣 京都大学, 医学研究科, 助教 (20452336)
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キーワード | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 腫瘍免疫 / PD-L1 / 免疫逃避機構 |
研究概要 |
本研究では『癌は腹腔内進展の際に自らを変化させるだけでなく、回りの環境、特に免疫環境を自己の生存に有利な方向に変化させつつ進展していく』という仮説に基づき、この現象を臨床サンプルおよび動物実験で証明すると同時にこれを人為的に変化させることで腹腔内進展を抑制できるかどうかを検討した。 臨床サンプルを用いた検討では、卵巣癌細胞がさまざまな免疫抑制因子のうち、PD-L1を強発現している症例において有意に腹腔内に悪性細胞を認める頻度が高いことを見出し、この分子が免疫学的に腹腔内播種を促進している可能性が考えられた。そこで、マウスの腹腔内播種モデルを用いて検討したところ、マウス卵巣癌細胞株であるHM-1およびID-8は、マウス腹腔内でCD8T細胞と遭遇することでPD-L1を発現し、免疫逃避を起こすことがわかった。これらの細胞においてレンチウイルスを用いてPD-L1を強制発現したり、あるいは抑制したところ、細胞障害性アッセイにおけるCD8の癌細胞攻撃能はPD-L1を強発現株では弱まり、逆にPD-L1を抑制すると強くなることが示された。さらにマウスの腹腔内播種モデルにおいても、PD-L1を強発現した株では有意に予後が悪く、PD-L1抑制株では良かった。これらのことから、卵巣癌においては腹腔内の免疫環境が播種に重要であり、これを改善することで患者の予後改善につながる可能性が示された。現在、この結果を用いて再発卵巣癌に対する免疫治療の臨床試験を実施中である。
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