#1上皮性卵巣腫瘍とマクロファージ(Mφ)との関連を調べるために、卵巣腫瘍の術後検体による免疫組織化学の検討により、良性腫瘍(13例)に比較して、境界悪性腫瘍(12例)と悪性腫瘍(上皮性卵巣癌:15例)において腫瘍の増殖を促進するM2Mφであることを示すCD68、CD163、CD204の陽性細胞が有意に増加していることが観察された。また、上皮性卵巣癌ではMCSFの発現の増加も示され、M2Mφへの分化を誘導していることが示された。 #2上皮性卵巣癌の腹水中に存在するM2Mφと腹腔環境との関連性について検討した。われわれは、進行した卵巣癌における腹水中のM2Mφの関与を見出すことを目的に検討した。上皮性卵巣癌症例(I期:5例、III+IV期:15例)、コントロール症例(子宮筋腫:4例)から採取した腹水中のMφとM2Mφの総数を比較したところ、前者の腹水中では後者に比較してMφとM2Mφの総数が有意に増加し、腹水中のinterleukin(IL)-6、IL10、Growth related oncogene-αのサイトカインが増加していた。この中で、IL6とIL10は癌細胞とMφの両者に局在が確認された。卵巣癌細胞株SKOV3の増殖能の検討では、卵巣癌III+IV期症例の腹水がコントロール、I期症例に比較して有意に増殖を促進した。卵巣癌症例の腹水中では、Mφ、特にM2Mφが増加することでIL6とIL10を産生し、卵巣癌細胞の増殖を促進する環境の場を提供していることが示唆された。このことから、MφのM2への分化が卵巣癌の播種進展機構に関与している可能性が考えられ、M2への分化に関わる因子の同定が卵巣癌の治療戦略のひとつと考えられた。
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