パクリタキセルは子宮体がんおよび卵巣がんに対して現在もっとも使用されている抗がん剤であるが、一方でパクリタキセルに抵抗性の腫瘍も存在する。我々は、5万遺伝子をカバーするゲノムワイドsiRNAライブラリーを用いて、Bub3、SEPT10、USP15という3種のパクリタキセル感受性分子の単離を行った。本研究は、子宮体がんおよび卵巣がんにおけるこれら各遺伝子の発現を調べ、臨床経過、特にパクリタキセルの有効性と比較検討することを一つの目的とする。二つ目の目的は、これら遺伝子を導入することによってパクリタキセル耐性機構を解除する新規治療法を確立するための基礎研究を行うことである。最終的には、これら各遺伝子の発現をもとにパクリタキセル療法に関するテーラーメード医療の確立を目指している。今年度は、卵巣がんおよび子宮体がんそれぞれの検体からmRNAを抽出し、realtime RT-PCR法によりBub3、SEPT10、USP15の発現量の検討を行なった。これらの発現は、パクリタキセル耐性のがん検体において有意に低い値を示した。これら遺伝子の発現が低い場合はパクリタキセルに耐性であることが予想されるが、腫瘍細胞にこれら遺伝子を導入することによりこの耐性機構を解除できる可能性が高い。今年度は、パクリタキセルとこれら遺伝子導入のコンビネーション療法の有効性を検討するために、パクリタキセル耐性の子宮体癌細胞株や卵巣癌細胞株に、Bub3、SEPT10、USP15のfull length cDNAをレトロウイルスベクターに組み込み感染させた。これらの細胞の培養液中にパクリタキセルを添加したところ、コントロールベクターを組み込んだ細胞に比較すると明らかに増殖能が抑制された。
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