CAVEは3メートル四方のスクリーンを前、左右、床面に配置し、そこに3次元映像を投影することによって広い視野に動的立体映像を与えることを可能にする装置である。平成21年度には、CAVEを用いた仮想現実(virtual reality : VR)下において健常被験者が3メール平方の床面内に指定された始点から終点までを直線的に歩行する課題を設定した。その際に、全面、左右面あるいは床面に投影されたテクスチャマッピングされた映像が、平行移動あるいは回転運動を行う環境を作成した。現在、これによって被験者の歩行経路に生じる影響を、確認しているところである。我々の今までの研究成果では、このVR環境への暴露は健常被験者の歩行に変化を与えている。したがって、このVR環境によりめまい・運動器不安定症の患者の歩行を矯正できると考えられる。 平成22年度以降は、健常者のみならず高齢者の基礎的データの収集が必要である。VRによって高齢者における空間認知の特性および眼球運動・脊髄反射神経系の可塑的変化を調べることは、高齢者の転倒予防として有効なリハビリをVRによる感覚入力処理の増強や感覚代行および空間認知の再構成の面から進める上で非常に重要である。さらに、今後このVR環境によって空間認知に変化が生じているか若年者と高齢者で比較検討する予定である。また、空間認知、眼位および歩行の変化の程度およびその時間経過を検討する予定である。
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