研究課題
プロスタグランジンD2はアラキドン酸代謝経路の主要代謝産物で好酸球性炎症において重要な因子のひとつであると報告されている。実験的中耳炎モデルマウスを用いて中耳腔におけるプロスタグランジンD2の誘導やその影響を解析した。マウスの中耳腔に中耳炎の主要起炎菌であるグラム陰性菌の構成成分のひとつであるエンドトキシンを注入したところ、注入後24時間から72時間にかけてマウスの中耳腔においてプロスタグランジンD2の強い発現を認めた。また、中耳腔や中耳粘膜に浸潤した顆粒球にプロスタグランジンD2の受容体の強い発現を認めた。マウスの中耳腔にプロスタグランジンD2を注入したところ、注入後24時間の時点においてマウスの中耳腔に灸症性サイトカインであるインターロイキン1β、インターロイキン6、およびmacrophage inflammatory protein 2の誘導を認めた。プロスタグランジンD2受容体は主要なものが2つ存在し、それぞれD prostanoid receptor (DP)、the chemoattractant receptor-homologous molecule expressed on T helper type 2 (Th2) cells (CRTH2)とよばれている。DPおよびCRTH2ノックアウトマウス、DP/CRTH2ダブルノックスとマウスを用いて、中耳におけるブロスタグランジンD2の作用経路を解析したところ、CRTH2ノックアウトマウス、DP/CRTH2ダブルノックスではエンドトキシンによる炎症誘導が有意に抑制された。その一方で、DPノックアウトマウスでは野生型マウスと同等の炎症誘導を認めた。以上の結果から、ブロスタグランジンD2の中耳腔における作用はCRTH2レセプターを介して行われていることが示された。また、in vitroの系でマウス多核白血球と単球/マクロファージに対してブロスタグランジンD2を作用させた場合、炎症性サイトカインの誘導は主に多核白血球に起因することが示された。プロスタノイドは炎症因子として重要であり、とくに好酸球性炎症で重要な役割をはたしていると考えられているブロスタグランジンD2の中耳腔における作用経路が判明したことは意義深い事であると思われる。
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