ヒト好酸球性中耳炎の症例より中耳貯留液を採取し、RayBio^[○!R] Human Cytokine Antibody Array G Series 2000を用いて炎症性タンパクを網羅的に解析した。その結果、好酸球性中耳炎症例の中耳貯留液中にはIL-6、Angiogenin、PARC、IL-1β、MCP-1、MIP-3α、NAP-2、MIP-1δ、IL-16、IL-5、IL-1α、IGFBP-1、IL-13、IL-3、MDC、Eotaxin-2、TNF-α、IL-15、LIGHT、TNF-β、Leptin、IL-2、BMP-4、RANTES、GCP-2、MIG、BMP-6、GDNF、IFN-γ、BLC、BDNF、TGF-β1、MCP-2、TARC、IL-7、IL-4、Eotaxin-3、Eotaxin、M-CSF、Fit-3 Ligand、IGFBP-4、EGF、IL-10、SDF-1、PDGF-BB、SCF、CNTF、IL-1ra、Fractalkine、GM-CSF、IGF-I、など、多数の炎症性タンパクが有意なレベルで存在することが明らかとなった。我々はこれら炎症因子のなかでGM-CSFに着目し、中耳におけるその機能を検討した。まず、中耳炎の主要な起炎菌であるグラム陰性菌の菌体成分であり、強力な炎症誘導作用をもつエンドトキシンの中耳投与により、マウス中耳腔にてGM-CSFが早期に誘導されることを確認した。GM-CSFの発現はエンドトキシン投与後6時間が最も強く、エンドトキシン投与後24時間で基準値まで低下した。次にエンドトキシンを野生型マウス中耳に投与することによって引き起こされる炎症細胞浸潤などの実験的中耳炎はGM-CSF中和抗体の前投与によって有意に抑制されることを確認した。また、中耳腔におけるIL-1β、TNF-α、MIP-2などの炎症性サイトカインの産生も有意に抑制された。これらの結果から、GM-CSFは中耳における炎症制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、好酸球性中耳炎モデルマウスの作製を試みた。マウスの腹腔内にOVAを前投与して感作を成立させた後にマウス中耳腔にアラムとOVAを注入した。その結果、マウス中耳腔に好酸球の誘導を認め、IL-4、IL-5、IL-13、EotaxinなどのTh2型/好酸球性関連炎症因子が有意に発現していることが明らかとなった。マウスは抗体など利用可能な実験材料資源が豊富であることから、好酸球性中耳炎の病態を反映するモデルマウスが作製されたことによって、今後の検討を加速させることが可能となり、意義深いと思われる。
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