平成21年度は準備段階として、安定的に中耳珠腫実験モデルをラットで作製する工夫を行った。ラットは従来使用していたモルモットより小動物であり、麻酔も難しい。しかし真珠腫増殖に関連する遺伝子の同定など、今後の研究の発展を考えればラットを実験動物に用いることは重要である。 1. 実験方法 生後6~8週齢のウィスター系ラット8匹を用いた。全身麻酔後、左側中耳骨胞を手術用顕微鏡下に開放し、骨胞内の粘膜をダイアモンド.バーを用いて可及的に除去した。予め採取した耳介基部の皮膚(2×2mm)を全層で結合組織側を下に骨面へ移植した。開放した骨胞を閉鎖し、創面を縫合した。 皮膚移植3週後、全身麻酔後に再び左側中耳骨胞を開放した。8匹のラットのうち、嚢胞状の真珠腫が確認できた動物は4匹のみであった。嚢胞(真珠腫)形成群4匹では皮膚嚢胞の形成を確認した後に嚢胞壁を破り、嚢胞内の表皮剥屑物(debris)を可及的に掻き出して上皮下の肉芽組織内に散布した。残り4匹はコントロールとした。 真珠腫形成群では左側中耳骨胞の再開放後4週目に、すべての動物をペントバルビタールの致死量投与により屠殺し、左側頭骨を摘出した。 2. 結果 真珠腫群で1匹、コントロール群1匹で感染などのため、結果から除外した。真珠腫群では3匹に骨胞内を占拠する真珠腫の形成が確認された。コントロール群では4匹とも真珠腫の形成は見られなかった。 3. 考察と今年度への課題 実験結果から、中耳真珠腫実験モデルをラットで安定的に作製することはやはり困難であった。現時点では形態的な研究であるため、安定的な実験動物を作成できるモルモットへの変更も考慮する必要があると考えられた。 今年度はモルモットでの実験モデルを使用して真珠腫群とコントロール群の間で、アポトーシス発現の有無を検討する予定である。
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