マウスCMVウイルス(MCMV)を、生後24時間以内のマウス(Balb/c)へ脳内接種した。陰性対照としてウイルスを腹腔内接種、またはPBSを脳内接種した。それぞれのマウスの聴力検査をABR検査により施行した。ウイルス接種マウスは還流固定・脱灰・ホルマリン固定・薄切を行った。マウス脳内、蝸牛内におけるMCMV抗原陽性部位の同定は、MCMV IE3に対する特異的抗体を用いた染色により行った。 約半数のマウスが死滅するウイルス量の脳内接種により、接種3週後では1/3に片側難聴、1/3に両側難聴をきたした。難聴は時間経過とともに進行し、6週までには全例に両側難聴が認められた。ウイルス抗原は接種1週後でラセン神経節に認められたが2週以降は認められなかった。陰性対照群では、6週目において腹腔内ウイルス接種では23匹中1匹に両側難聴が認められたが、PBSを脳内投与した例では6匹全例において難聴は認められなかった。 MCMVを生後24時間以内のマウスへ脳内接種することにより、全例で難聴が引き起こされることが確認できた。MCMVの腹腔内接種やPBSの脳内接種では難聴は引き起こされず、本実験での難聴はMCMVによるものと考えられる。ウイルス抗原陽性部位はラセン神経節であったが、ウイルス接種2週以降では認められなかった。さらに抗原陰性状態での感染を検討するために、レーザーマイクロダイセクション法によるMCMV DNA検出を試行中である。
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