サイトメガロウイルスによる聴力障害は、先天性聴覚障害をきたす原因として難聴遺伝子変異に伴う聴覚障害についで頻度が高い。欧米ではサイトメガロウイルスによる胎内感染、それに伴う感染症は克服すべき疾患として注目を浴びている。ウイルス感染によって聴覚障害をきたすためにその発症メカニズムを解明することはサイトメガロウイルス難聴の発症を予防するもしくは治療戦略を構築する上で不可欠である。ヒトの場合、胎内でサイトメガロウイルスに感染すると10%程度に聴力障害をきたすことが疫学的な調査から解明された。われわれはマウスを用いた実験系でほぼ確実に聴覚障害を生じるモデルの作製に成功した。これらの動物実験モデルにおいて免疫染色によりウイルスの局在性を調べることに成功した。しかし、免疫染色による局在性を調べる手法では聴力障害をきたしていても免疫染色で感染細胞が染色されないことが判明した。ここでウイルスの局在を明らかにするためにレーザーマイクロダイセクションの手法を導入し、直接感染モデルの側頭骨からそれぞれの解剖学的な区域から微小材料を採取し、直接サイトメガロウイルスのDNAを評価することを試みた。しかし、われわれが作成した動物実験モデルの切片では条件設定を変えながらレーザーマイクロダイセクションによるDNA検索を試みたが、微小区域における検体採取ができず、最終的なレーザーマイクロダイセクションによるウイルスの局在を明らかにするという指標を達成することができなかった。
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