1 CASKノックアウトマウスの解析 LoxP-CASK-LoxP配列を染色体上に保持するマウスを、内耳特異的なプロモーターであるFoxg1の制御下でCreタンパクを発現するマウスと掛け合わせることにより、コンディショナルCASKノックアウトマウスを得た。このマウスから得た内耳組織の免疫染色を行い、内在のCASKが欠失していることを確認した。その上で内耳感覚上皮の形態学的な解析を行った。その結果、CASKノックアウトマウスでは有毛細胞数の減少が認められた。この結果から、CASKが有毛細胞の分化あるいは維持に関与することが示唆されるが、得られたマウスの数が未だ少数であるため、今後、検体数を増やすと同時に、有毛細胞以外への影響などについて、さらに詳細な解析を行う予定である。 2 CASK結合タンパク質の解析 CASKの結合因子を同定するため、マウス内耳組織から抗CASK抗体を用いた免疫沈降によりCASKタンパクを沈降させ、これにより共沈する分子を質量分析により解析した。その結果、共沈物中に細胞内膜輸送において重要な役割を果たすESCRTタンパク質を検出した。共沈物中からは、細胞内で複合体を形成すると考えられる数種のESCRT分子が検出されたことから、CASKが複合体の一部として機能する可能性が考えられる。CASKが細胞膜受容体のエンドサイトーシスに関与するとの報告はあるが、ESCRTとの関係はこれまでに報告がなく、CASKが未知の膜輸送に関与し、結果として内耳機能に重要な役割を果たしている可能性が示唆される。
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